自営業をしている方の中には、
「フラット35は自営業だと通りにくいのでは?」
「確定申告の内容で落ちることはある?」
「会社員と何が違うのか知りたい」
と不安を感じている方も多いでしょう。
確かに、自営業は収入の波や書類の複雑さから、審査が慎重に行われます。しかし、フラット35は国の支援機構が関わる制度であり、安定した所得と正確な書類を整えれば十分に通過可能です。
この記事では、自営業の方がフラット35の審査を通すために必要な準備とポイントを詳しく解説します。審査で見られる基準や必要書類、通過率を高めるための現実的な対策を整理しました。
住宅ローン審査に不安がある方も、これを読めば自営業でもフラット35を利用する具体的な道筋が見えてくるはずです。
自営業でもフラット35は利用できる?仕組みと会社員との違い

フラット35は、会社員だけでなく自営業や個人事業主も利用できる住宅ローン制度です。
民間金融機関と住宅金融支援機構が提携しており、「職業」ではなく「返済能力」を基準に審査が行われます。
つまり、安定した収入と納税実績を証明できれば、自営業でも十分に通過可能です。
フラット35の基本と仕組み(固定金利・支援機構の制度概要)
まず、フラット35の概要を理解しておきましょう。以下の表は、その主な特徴をまとめたものです。
| 項目 | 内容 |
| 金利タイプ | 全期間固定金利(借入時の金利が完済まで変わらない) |
| 提携機関 | 民間金融機関と住宅金融支援機構(共同提供) |
| 審査基準 | 返済能力・年収に対する返済負担率・信用情報・物件要件 |
| 保証料 | 不要(保証会社を利用しない) |
| 繰上返済手数料 | 無料(インターネット申込・金融機関窓口とも) |
| 団体信用生命保険(団信) | 原則加入(加入しない場合は金利引下げなし) |
| 借入可能額 | 100万円〜8,000万円(物件価格の100%以内) |
| 返済期間 | 15年以上35年以内(物件により上限が異なる) |
自営業が利用できる理由と会社員との審査の違い
会社員は「源泉徴収票」で安定した給与を証明しますが、自営業の場合は確定申告書をもとに実際の所得を評価します。つまり、売上が高くても経費で所得が減っている場合、審査での評価が下がる可能性があります。一方、事業を3年以上継続しており、安定した所得が確認できる場合は問題ありません。
民間ローンとの違いから見る「自営業こそフラット35」の理由
同じ住宅ローンでも、民間金融機関とフラット35では審査の基準や見られ方が大きく異なります。
一般的な銀行ローンでは、安定収入を前提とした審査が行われるため、会社員よりも収入が変動しやすい自営業はやや不利とされがちです。
| 項目 | 民間金融機関 (一般的な住宅ローン) | フラット35 |
| 必要書類 | 決算報告書または確定申告書 3期分 | 決算報告書または確定申告書 2期分 |
| 収入評価 | 直近と3期平均のうち低い方を採用 | 直近の収入が上がっていれば、その増加分を評価 |
| 審査主体 | 各銀行が独自に判断 | 民間金融機関+住宅金融支援機構(共通基準) |
| 審査の柔軟性 | 銀行ごとに差が大きい | 安定した申告・納税実績があれば比較的通りやすい |
民間金融機関の場合、3年分の平均で見られるため、一時的に売上が落ちた年があると評価が下がる傾向があります。
一方、フラット35は直近の収入が改善していればその上昇を評価してくれるため、「事業を立て直した」「収入が増えてきた」タイミングの自営業者にとって非常に有利な制度といえます。
フラット35は、過去の数字だけでなく「現在の収入状況」をしっかり評価してくれる住宅ローンです。そのため、事業を見直したり、経営を立て直して収入が改善してきた方ほど、その努力がきちんと審査に反映されやすい仕組みになっています。
自営業者が見られるフラット35の審査ポイントと注意点
自営業者がフラット35を利用する場合、金融機関は「返済できる根拠」を書類で確認します。主に見られるポイントは次の3つです。
審査項目を整理すると、以下のようになります。
| 審査項目 | 内容 | 審査の着眼点 |
| 確定申告書 | 所得の安定性を確認 | 赤字年度がないか、収入推移が安定しているか |
| 返済負担率 | 返済額 ÷ 所得 × 100 | 35%以内が目安(年収500万円なら175万円以下) |
| 信用情報 | 他の借入・延滞状況を確認 | 延滞・多重債務があるとマイナス評価 |
この3点をクリアしていれば、職業に関係なく通過の可能性は十分あります。
赤字や所得減少がある場合のリスクと対処法
自営業では、事業拡大のために経費が増えたり、一時的に赤字になることもあります。しかし、審査時に「赤字=収入不安定」と見なされるリスクがあります。
そうした場合は、以下のように補足説明を加えると効果的です。
- 一時的な経費増加であることを証明(設備投資・仕入増など)
- 売上回復が見込める契約書・事業計画書を添付
- 直近の納税証明書で誠実な納税実績を示す
こうした説明資料があると、担当者の印象が大きく変わります。
金融機関による判断の違いに注意
フラット35は共通の制度ですが、審査は各銀行が行うため、判断基準に差があります。たとえば、A銀行では「青色申告必須」、B銀行では「白色申告可」など、微妙に違うこともあります。このため、1行で断られても別の銀行で通るケースは少なくありません。
フラット35で必要な書類と準備のコツ

自営業者がフラット35を申し込む際には、会社員よりも多くの書類が必要です。準備を怠ると審査に時間がかかるため、早めに揃えておきましょう。
以下の表に、提出が求められる主な書類とその内容を整理しました。
| 書類名 | 内容・補足 |
| 確定申告書 | 所得を確認する最重要書類。収支内訳書も添付。 |
| 納税証明書(その1・その2) | 税金の納付状況を確認。未納があると減点対象。 |
| 青色申告決算書/収支内訳書 | 経費や利益の内訳を詳細に確認。 |
| 事業概要書 | 業種・事業年数・取引先・所在地を明記。 |
| 本人確認書類 | 運転免許証・マイナンバーカードなど。 |
スムーズに審査を進めるための書類準備のポイント
提出前には、次のポイントを必ず確認しましょう。
- 書類の記載漏れや印字の不鮮明がないか
- 申告内容と実際の入金金額が一致しているか
- 経費の過大計上で所得が極端に減っていないか
- 税金の未納・延滞がないか
自営業がフラット35を通りやすくするための具体的対策
審査通過を目指すうえで、自営業者が取り組むべき現実的な対策を紹介します。
所得を安定させる・補足資料を添える
3年以上の継続所得が理想です。もし一部の年で減少がある場合は、補足資料で説明しましょう。事業計画書や取引先の契約書を提示すれば、事業の安定性を評価してもらいやすくなります。
返済負担率を下げる工夫(35%以内を目安に)
住宅ローンの審査では、「収入に対してどのくらいの割合を返済に充てるか」という返済負担率が重要な基準になります。これは、年間の返済額を年収で割って求める数値で、高すぎると“返済リスクが高い”と判断される可能性があります。一般的に、フラット35では返済負担率35%以内が目安とされます。
次の表を参考に、自分の年収から無理のない借入額をイメージしてみましょう。
| 年収 | 年間返済額目安 | 月々の返済額(35年ローン) |
| 400万円 | 約140万円 | 約11〜12万円 |
| 500万円 | 約175万円 | 約14〜15万円 |
| 600万円 | 約210万円 | 約17〜18万円 |
※上記の金額は「返済負担率35%」を基準にした目安です。実際の審査では、他の借入(車・カードローン等)や金利条件によって許容範囲が変わる場合があります。
頭金を多めに設定し、借入額を抑える
頭金が多いほど借入比率が下がり、審査が有利になります。理想は物件価格の10〜20%以上です。特に自営業の場合、「自己資金がある=安定経営」と見なされ、信用力が高まります。
しかし、必ずしも頭金が多くなければ通らないわけではありません。頭金が少なくても審査を通すための具体策は、【頭金なしでも安心!住宅ローン審査に通るための条件と現実的な対策】を参考にしてみてください。
信用情報をチェック・改善する
CIC・JICCなどで過去の延滞や多重債務がないかを確認しましょう。
携帯電話やクレジットの分割払いの滞納も影響するため、早めの確認が重要です。
信用情報は、延滞や多重債務などの履歴が記録されており、審査結果に大きく影響します。具体的な確認方法や対策は、【住宅ローン審査で見られる個人信用情報とは?CIC・JICC・KSCの開示方法と対策】を参考にしてみてください。
ローンに強い不動産会社へ相談する
銀行ごとの審査傾向を理解している不動産会社なら、あなたに合った金融機関を選定してくれます。
フラット35の審査を通すには、銀行選びや交渉力も大切です。自分に合った相談先を知りたい方は、【ローンに強い不動産相談窓口の選び方|審査に不安がある方必見】をあわせてご覧ください。ローンに強い会社を選ぶポイントがわかります。
フラット35のメリット・デメリットを自営業目線で整理
最後に、自営業がフラット35を選ぶ際の利点と注意点をまとめます。
自営業者が利用するメリット
利用時のデメリット・注意点
書類や健康状態に不安がある場合は、早めに専門家へ相談しましょう。
まとめ|準備とサポートで自営業でもフラット35は通る
フラット35は、自営業でも安定性を示せば通る住宅ローンです。審査で重視されるのは職業ではなく、継続した所得・納税・信用といった「返済の根拠」です。そのためには、確定申告3年分の整合性を確認し、返済負担率を35%以内に抑えることが大切です。さらに、信用情報や提出書類を丁寧に整えることで、金融機関からの信頼度が高まります。
また、銀行選びや書類準備に不安がある場合は、ローンに強い不動産会社など専門家へ相談することで、自分に合った金融機関を見つけやすくなります。準備や書類で悩む前に、専門家へ相談することでスムーズな解決策が見つかります。
民間ローンでは平均所得の理由でうまくいかなかった方でも、直近の収入が改善していれば、その頑張りを評価してもらえるのがフラット35です。

